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[Vol.15]季節を超えて続く“夏疲れ”。秋冬の不調、その正体は?夏疲れは、身体を3つの層(表層・中層・深層)に分けて考える

前号から始まった新シリーズ『矢澤博士に聞いてみよう!!』の第2回です。
読者の皆様よりお寄せいただいたご質問に、矢澤博士が科学的な視点で解説する形式でお届けします。
今号の「読者からのご質問」は

今年は「夏の疲れ」がなかなか抜けず、先月にはインフルエンザにもかかってしまいました。
季節が変わっても、まだ夏の影響が残っているのでしょうか?
今回は、その「夏疲れの正体」について、解説していきます。
今回のテーマ

季節を超えて続く“夏疲れ”。秋冬の不調、その正体は?
『夏疲れは、身体を3つの層(表層・中層・深層)に分けて考える』

今号は、3つの層と「夏疲れ」との関係について、矢澤博士に詳しく教えていただきます。

プロフィール

矢澤先生お写真

農学博士 矢澤 一良 先生
(Kazunaga Yazawa)

早稲田大学 ナノ・ライフ創新研究機構 規範科学総合研究所ヘルスフード科学部門 部門長

1972年 京都大学・工学部・工業化学科 卒業
1973年 (株)ヤクルト本社・中央研究所入社、微生物生態研究室勤務
1986年 (財)相模中央化学研究所入所(主席研究員)
1989年 東京大学より農学博士号を授与される
2002年 東京水産大学大学院(現東京海洋大学大学院) 水産学研究科 ヘルスフード科学(中島董一郎)寄附講座(客員教授)
2012年 東京海洋大学 特定事業「食の安全と機能(ヘルスフード科学)に関する研究」プロジェクト(特任教授)
2014年 早稲田大学ナノ理工学研究機構 規範科学総合研究所ヘルスフード科学部門(研究院教授)
2019年より現職
ライフワークは、「食による予防医学」、「オール世代フレイル対策」など。

夏疲れの正体とは
見落としがちな●●●が影響していた

[原因の概要]
夏疲れは、なぜ起こるのか?
「すっかり夏から秋に季節は変わったのに身体が重くてだるい。これは夏疲れの名残なのでしょうか?」
まず、「夏疲れ」とは病名ではなく、高温多湿の環境が続くことで身体の自律神経・消化機能・水分・電解質バランス・エネルギー代謝(エネルギーをつくり出すはたらき)が乱れ、全身の機能低下が起きている状態を指します。

夏疲れの典型的な症状は、以下のことが挙げられます。

  • 倦怠感・だるさ
  • 食欲不振・胃もたれ
  • 冷えやほてりの繰り返し
  • 集中力の低下・眠りの質の低下
  • めまいや筋肉のつり
具体的に身体にはどのような変化が起こっているのでしょうか?
夏疲れの状態でみられる主な身体の変化を、次の表にまとめました。

※表は横にスライドしてご覧いただけます。

身体の変化 何が起きているか 症状の例
自律神経の乱れ 冷房と外気温の出入りで交感神経・副交感神経が乱れる 倦怠感、だるさ、眠気、頭痛
消化機能の低下 胃腸の血流が低下・胃酸や消化酵素の分泌低下 食欲不振、胃もたれ、下痢・便秘
脱水・ミネラル不足 発汗で水分と電解質が失われる めまい、立ちくらみ、足のつり
体温調節の乱れ 汗をかいても熱がこもりやすい ほてり、睡眠の質低下
エネルギー代謝の低下 ミトコンドリアの機能が低下しやすい 疲労感、集中力低下
活性酸素の増加 暑熱ストレスで酸化ストレス増加 体のコリ、肌荒れ、疲れやすい

もう少し専門的に、背景にあるメカニズムを補足すると、次の通りとなります。

  • 高温 ➡ 血流が体表面へ ➡ 内臓の血流不足
  • 冷たい飲み物・冷房 ➡ 副交感神経低下 ➡ 胃腸の働き低下
  • 発汗増加 ➡ ナトリウム・カリウム・マグネシウム喪失 ➡ 神経伝達低下
  • 暑熱ストレス ➡ コルチゾール増加 ➡ 慢性疲労
  • 栄養不足(特にたんぱく質・ビタミンB群・オメガ3不足) ➡ 代謝低下
    (身体のエネルギーをつくる力が弱くなる)

細胞の構造図

細胞の構造図

※アーケルバイオマリン社資料を改変

典型的な症状はありますが、タイプ別に分けることはできないのですか?
夏疲れにはいくつかタイプがあり、それぞれで身体の乱れ方も違うのです。
[夏疲れの主なタイプ(種類)]
典型的な夏疲れには5つのタイプがある
夏疲れにタイプ(種類)があるのですね。
ここで、夏疲れのタイプ(種類)について大別した表を見てみましょう。

※表は横にスライドしてご覧いただけます。

タイプ 主な症状 備考
自律神経型 倦怠感、頭痛、睡眠の質低下 温度差ストレスで交換神経と副交感神経の切り替えが乱れる
消化器型 胃もたれ、食欲不振、下痢・便秘 自律神経の乱れ+ATP*不足で消化機能低下
(胃腸の血流の低下・胃酸や消化酵素の分泌低下)
脱水・電解質型 めまい、筋肉がつる、むくみ 水分バランスと細胞膜の透過性の低下が関係
栄養不足型 疲れが取れない、肌荒れ 細胞膜が栄養を取り込めず、ミトコンドリアが燃料切れ
慢性疲労・秋バテ型 季節が変わってもだるい 細胞膜とミトコンドリアの回復が不十分で、エネルギー代謝が落ちたままの状態

*ATP(アデノシン三リン酸):細胞内にある ミトコンドリア で作られる、体内で栄養をエネルギーに変換して使う「小さなエネルギーの単位」。筋肉を動かしたり、脳を働かせたり、体のあらゆる活動のエネルギー源になります。

大別してもこれだけのタイプがあり、主な原因も異なるのですね。
その通りです。そのため、表面的な症状だけをみて対処するのでは不十分なのです。
[3つの層]
夏疲れの「正体」は3つの階層に分かれている
夏疲れというと単に“暑さで疲れた状態”というイメージが強いのですが、そうではないのですね。
夏疲れの根本には、『自律神経の乱れ』と『ミトコンドリアのエネルギー低下』の2つが大きな要素として関わっています。ですが、さらに深くみると、もう一つ重要な要素があります。
3つ目の鍵は『細胞膜の質』です。実は、細胞膜のダメージが長引くと、『ミトコンドリアのエネルギー低下』や『自律神経の乱れ』にも影響して、疲労が秋や冬まで残る原因にもなるのです。
夏疲れは、表層 ➡ 中層 ➡ 深層の3つの層で整理すると理解しやすくなります。

※表は横にスライドしてご覧いただけます。

階層 鍵となる要素 役割
表層
(直接の症状を生む)
自律神経の乱れ だるさ・食欲低下・睡眠の乱れ
中層
(疲れや代謝低下の原因)
ミトコンドリアの機能低下 ATP産生低下、疲労感
深層
(根本の要因)
細胞膜の機能低下
(膜の質の低下)
細胞のスイッチ切り替え、栄養取り込みの低下
[細胞膜の重要性]
細胞膜がなぜ深層なのか
深層に細胞膜が位置づけられていますが、なぜなのですか。
細胞内のミトコンドリアが“エネルギー工場”ならば、細胞膜は“全身のコントロールセンター”です。
  • 栄養やミネラルの取り込み
  • ホルモンや神経伝達
  • 体温調節の指令を出す自律神経との連携
  • ミトコンドリアへの脂肪酸の供給
これらは、すべて細胞膜の「流動性」と「情報伝達機能」によって実現されます。

しかし夏は、
  • 脱水
  • 活性酸素の増加
  • 食欲低下によるオメガ3やレシチン不足
  • 高糖質・冷たいものの摂りすぎで細胞膜が硬くなりやすい
そのため、細胞膜が硬くなりやすい環境のため、細胞膜の機能が低下する。
不健康な細胞図

© AKER BIOMARINE, Inc

細胞膜は硬くて剛性の高い膜を持ち、栄養を取り込んだり老廃物を排出したりするのが困難になります。

健康な細胞図

© AKER BIOMARINE, Inc

細胞膜は柔らかく、透過性に優れていて、栄養素の吸収や代謝老廃物の排出が円滑に行われます。

結果として、
自律神経が乱れる ➡ ミトコンドリアに燃料が入っていきにくくなる ➡ エネルギー不足 ➡ 夏疲れ
という流れとなります。

※表は横にスライドしてご覧いただけます。

項目 位置づけ 説明
自律神経 表面的な引き金 乱れると身体がだるくなったり・眠くなったり・内臓のはたらきが鈍くなったりする
ミトコンドリア エネルギー不足の原因 ATP不足=夏疲れの原因
細胞膜 根本原因 細胞機能の土台、情報伝達の入口
細胞膜の機能の低下がなぜ自律神経の乱れにつながるのでしょうか。
「細胞膜の機能低下」と「自律神経の乱れ」は、一見すると直接関係なさそうに思えますが、実は密接につながっています。順を追って説明します。
  • ① 自律神経と細胞膜は「情報をやり取り」する関係にある
  • 自律神経は、脳から全身の臓器・細胞に「働け」「休め」「血管を広げろ」などの指令(電気信号や神経伝達物質)を送ることで身体をコントロールしています。
    この「情報の受け渡し」は、すべて細胞膜上の受容体(レセプター)を介して行われます。

    つまり、細胞膜が健康でないと、神経からの信号を正確に受け取れなくなるのです。

  • ② 細胞膜が硬くなるとどうなるのか
  • 細胞膜は、本来しなやかで柔軟です。
    ところが、脂質の質が悪かったり、酸化や炎症が進むと、膜が「硬く」なり、レセプター(受容体)の動きが鈍くなります。

    結果として、
    神経からの信号をうまくキャッチできず、「情報伝達が乱れる」=「自律神経のコントロールが乱れる」という状態になります。

  • ③ 自律神経が乱れるとどうなるのか
  • 自律神経がうまく働かないと、血流、体温調整、内臓の働きなどが不安定になります。
    とくに、ミトコンドリアへの酸素や栄養の供給(=燃料の搬入)も滞ります。

    ミトコンドリアの働きが低下
    → エネルギー産生が落ちる
    → 「だるい」「疲れが取れない」=夏疲れのような状態に。

[自律神経]
典型的な夏疲れの自律神経の乱れは3つある
典型的な夏疲れによる自律神経の乱れについて教えてください。
夏疲れでみられる自律神経の乱れは主に3つにあります。
  • ① 交感神経(活動モード)が過剰になる
  • 夏は暑さに対して体温を下げようとするため、身体は「汗をかく」「血管を広げる」など、絶えず調節を行います。
    この状態は、実は交感神経が常に働いている状態です。

    ▶ 長時間の交感神経優位
    = 身体が“ずっと緊張モード”になる。
    = 睡眠が浅い、肩こり、胃腸の不調、イライラ、だるさがある。
    つまり、クーラー・暑さ・紫外線などのストレス刺激がずっと交感神経を刺激し続けるのです。

  • ② 副交感神経(休息モード)の低下
  • 身体を休め、回復させるのは副交感神経の役割です。
    しかし、体が冷えたり、睡眠の質が落ちたり、栄養が偏ることで、副交感神経がうまく働かなくなります。

    ▶ 結果:
    消化機能の低下、胃もたれ、便秘、倦怠感、免疫力も弱まります。

  • ③ 上記2つの切り替え不良(リズムの崩れ)
  • 本来、自律神経は「昼は交感神経」「夜は副交感神経」と1日の中でリズムを保っています。
    ところが、

    • 冷房と外気の温度差
    • 夜更かしやスマホのブルーライト
    • 栄養・水分バランスの乱れ
    • これらによって自律神経のスイッチが切り替わりにくくなるのです。

    ▶ 結果:
    昼もだるい、夜も休まらない。
    「常に疲れている」=夏疲れの典型的な状態になります。

[ミトコンドリア]
ミトコンドリアを支える細胞膜
3つの層のうち、細胞膜と自律神経、自律神経とミトコンドリアの関係をみてきました。残る細胞膜とミトコンドリアの関係について教えてください。
細胞膜が、「エネルギー工場であるミトコンドリアのはたらきをどのように支えているか」をみていきましょう。
  • ① 細胞膜は、ミトコンドリアの「入口と司令塔」
  • 細胞膜には栄養や脂肪酸、酸素、信号物質を細胞内に取り込む役割があります。
    ミトコンドリアはこれらを燃料にATPを作るので、細胞膜の状態が悪いと「燃料が届かない」状態になります。

    [具体例]

    • 脂肪酸の取り込み
    • → 細胞膜が硬くなると、オメガ3などの長鎖脂肪酸が細胞内にスムーズに入らず、ミトコンドリアに届く量が減る

    • 糖の取り込み
    • → グルコース輸送体の働きが低下 → ミトコンドリアに十分なエネルギー源が届かない

    • 酸素供給
    • → 細胞膜の柔軟性低下で血流制御に微妙な影響 → 酸素が届きにくくなる

  • ② 情報伝達の乱れは「ミトコンドリア・スイッチ」を止める
  • ミトコンドリアには「活動スイッチ」があります。

    • ホルモン(インスリン、アドレナリン、甲状腺ホルモン)
    • 神経伝達物質(アセチルコリン、ノルアドレナリン)
    • これらの信号を受けてATPを作る量や代謝経路を調整しています。
      → 細胞膜の受容体やシグナル経路が乱れると、ミトコンドリアはフル稼働できずエネルギー不足になります。

  • ③ 活性酸素(ROS)の問題
  • 夏の暑熱ストレスや紫外線で活性酸素が増えると:

    1. 細胞膜の脂質が酸化 ➡ 細胞膜が硬く・壊れやすくなる
    2. 細胞膜が壊れるとミトコンドリアも酸化ストレスに弱くなる ➡ ATP産生がさらに低下
    3. つまり、夏疲れは「細胞膜酸化 ➡ ミトコンドリア疲弊 ➡ 全身疲労」の連鎖から様々な体調不良が起こる

  • ④ ミトコンドリアの形態にも影響
  • ミトコンドリアは膜で囲まれた二重膜構造ですが、細胞膜から届く脂質の質が低いとミトコンドリア膜も硬くなることがあります。

    • 硬い膜 ➡ 酵素や電子伝達系の働きが低下
    • 柔らかい膜 ➡ ATP生産効率が良い
      ➡ 細胞膜の健康はミトコンドリア膜の健康にも直結しています
[3つの層と5つのタイプ]
夏疲れをそのまま放置すると秋・冬まで体調不良が続きます。
ここまで、夏疲れを考えるときの3つの層と各層の関係性をみてきました。この3つの層(表層・中層・深層)と5つの夏疲れタイプとの関係性を教えてください。
以下の表に関係性が分かりやすいようにまとめてみました。

※表は横にスライドしてご覧いただけます。

夏バテタイプ 主な表層症状 根本層での
主因
補足説明
自律神経型 倦怠感、頭痛、睡眠の質低下 表層:
自律神経
温度差ストレスで神経の切り替えが乱れる
消化器型 胃もたれ、食欲不振、下痢・便秘 表層+中層 自律神経の乱れ+ATP不足で消化機能が低下
脱水・
電解質型
めまい、筋肉がつる、むくみ 中層+深層 水分バランスと膜の透過性の低下が関係
栄養不足型 疲れが取れない、肌荒れ 中層+深層 細胞膜が栄養を取り込めず、ミトコンドリアが燃料切れ状態
慢性疲労・
秋バテ型
季節が変わってもだるい 深層中心 細胞膜とミトコンドリアの回復が不十分で、エネルギー代謝が落ちたままの状態
夏疲れの隠れた原因は、
細胞膜の質の低下 ➡ 全身疲労へ
そのため、自律神経だけ、ミトコンドリアだけ では不十分なのです。
➡ 「細胞膜の修復」から始めるという考え方が重要になります。
細胞膜のダメージが長引くと、中層や表層にも影響して、疲労が秋や冬まで残る原因になる可能性もあるのです。

最後に、それぞれの層を元気に取り戻すための具体的な、食事・栄養・生活習慣例をご紹介いたします。

※表は横にスライドしてご覧いただけます。

主な不調 回復の方向性 栄養・食材事例 生活習慣事例
表層:
自律神経
眠気・だるさ・頭重感・冷えとほてり 神経のオンオフを整えリズム再起動 ビタミンB群(豚肉、玄米、納豆)マグネシウム(豆腐、海藻、ナッツ)GABA(発芽玄米、トマト)など 朝日を浴びて体内時計リセット。夜は湯船で深部体温を下げる。夕方以降のカフェイン控える。
中層:
ミトコンドリア
慢性疲労・集中力低下・冷え ATP再生環境を整える コエンザイムQ10(青魚、肉類)ビタミンB群(レバー、卵)L-カルニチン(ラム肉)αリポ酸(ほうれん草、ブロッコリー)など 軽い有酸素運動で酸素供給。十分な睡眠で修復。深呼吸・ストレッチで酸化ストレス軽減。
深層:
細胞膜
疲労が抜けない・免疫低下・肌荒れ・冷え・秋バテ 流動性を回復、栄養と信号の通り道を確保 オメガ3脂肪酸(クリルオイル、青魚)レシチン(卵黄、大豆)アスタキサンチン(サーモン、桜えび)ビタミンE(アーモンド、かぼちゃ)など 冷たいものを控え、身体を温め血流改善。脱水防止(水+少量塩・ミネラル)。質の良い油を摂り加工油を避ける
[今回のまとめ]
3つの層をバランス良くケアする
今回、読者の方からのご質問について解説してきましたが、まとめると次のようになります。
  • 夏疲れは表層・中層・深層の3層で起こる
  • 深層(細胞膜)の修復 ➡ 中層(ミトコンドリア)の再始動 ➡ 表層(自律神経)の再調整
  • 秋初期〜中期は、夏のダメージを回復し、冬に備える最適なタイミング
  • 栄養・食材・生活習慣で3層をバランスよくケアすることが重要
夏疲れがまだ残っているのは、毎夏の恒例行事のようなものなので仕方がないものなのでしょうか?
夏疲れは単なる季節の疲れではなく、身体からの注意サインです。涼しくなったこの時期に、食事や休養で身体をいたわり、疲れをしっかりとケアすることが元気に秋・冬を過ごすためのポイントです。

次回、「矢澤博士に聞いてみよう」をお楽しみにお待ちください。
読者の皆さまからのご質問やご意見などを引き続きお寄せください。