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[Vol.16]身体の“だるさ”の季節リレーを止める!身体のスイッチを入れて、季節を超えて元気になる

新シリーズ『矢澤博士に聞いてみよう!!』の第3回です。
読者の皆様よりお寄せいただいたご質問に、矢澤博士が科学的な視点で解説する形式でお届けします。
今号の「読者からのご質問」は

夏の疲れ、夏バテとは馴染みのある言葉ですが、最近「秋バテ」「冬バテ」という言葉を聞きました。どのようなものなのか教えてください。
今回は、「季節で変わる身体の疲れの中身」について、解説していきます。
今回のテーマ

「夏バテ」、「秋バテ」、「冬バテ」同じ“だるさ”でも中身は違います。
『それぞれの疲れを、3つの視点から考える』

今号は、「季節の疲れ」について、矢澤博士に詳しく教えていただきます。

プロフィール

矢澤先生お写真

農学博士 矢澤 一良 先生
(Kazunaga Yazawa)

早稲田大学 ナノ・ライフ創新研究機構 規範科学総合研究所ヘルスフード科学部門 部門長

1972年 京都大学・工学部・工業化学科 卒業
1973年 (株)ヤクルト本社・中央研究所入社、微生物生態研究室勤務
1986年 (財)相模中央化学研究所入所(主席研究員)
1989年 東京大学より農学博士号を授与される
2002年 東京水産大学大学院(現東京海洋大学大学院) 水産学研究科 ヘルスフード科学(中島董一郎)寄附講座(客員教授)
2012年 東京海洋大学 特定事業「食の安全と機能(ヘルスフード科学)に関する研究」プロジェクト(特任教授)
2014年 早稲田大学ナノ理工学研究機構 規範科学総合研究所ヘルスフード科学部門(研究院教授)
2019年より現職
ライフワークは、「食による予防医学」、「オール世代フレイル対策」など。

身体の“だるさ”の季節リレーを止める!
身体のスイッチを入れて、季節を超えて元気になる

気づけば、「なんとなく身体が重い」「朝からシャキッとしない」「肌が乾きやすい」「風邪をひきやすい」。夏が終わっても、この“だるさ”だけがずっとついてくる。そんな経験はありませんか?
実は、夏 → 秋 → 冬と季節が移り変わるとき、私たちの身体の中では、気温・湿度・日照の変化に合わせて“体内スイッチの切り替え”が起きています。
しかし、この切り替えがうまくいかないと、夏の疲れが秋に持ち越され、さらに冬へと引き継がれていく、いわば「季節のだるさリレー」が起きてしまうのです。

特に重要なのが次の3つの視点です。

  • 自律神経のゆらぎ
  • 身体の活動効率(=ミトコンドリアのはたらき)
  • 細胞膜の柔らかさ(=身体のスイッチの滑らかさ)

身体の不調の多くは、実はこの3つのバランスが崩れたところから始まります。そして、美容面(肌の潤い・ハリなど)も免疫面(風邪・感染症)も、この3つと深く関係しています。
では、どうすれば「季節のだるさリレー」を止めて、冬まで元気を保てるのか?
あなたの身体の中で起きていることを、一緒にのぞいていきましょう。

[季節の疲れの連鎖]
夏の疲れはどこへ行く? 実は、“身体の中に残り続ける”
前号では、「夏の疲れ」について教えていただきました。
今回は、“夏➡秋➡冬”と疲れが続いてしまう理由について教えてください。
多くの人は「夏が終われば夏バテも自然に消える」と思っていませんか?
  実際はその逆で、夏の疲れは、放っておくと秋・冬へと引き継がれる、“季節疲れの連鎖”を起こします。
夏の疲れは、はなぜ秋まで引きずられるのでしょうか?
原因は、自律神経のバランスと身体のエネルギー効率にあります。
夏の暑さや湿度で自律神経が乱れると、身体の中で“休むモード”と“動くモード”の切り替えが鈍くなります。
“休むモード”と“動くモード”ですか?
自律神経には交感神経(活動モード)と副交感神経(休息モード)があり、夏は交感神経が過剰にはたらきやすく、休息モードに切り替えにくくなるのです。

※表は横にスライドしてご覧いただけます。

【夏疲れの主な身体の状態】

状態 特徴 影響
水分不足 汗で水分が失われる 脱水、だるさ
電解質バランスの乱れ 塩分・ミネラル不足 むくみ、筋肉のこわばり
消化機能低下 胃腸が疲れる 食欲不振、栄養不足
エネルギー代謝の低下 ミトコンドリアのはたらき鈍化 疲れやすい、集中力低下
「身体のスイッチ(各器官のはたらき)を切り替える力」が弱まったままの状態で秋を迎えてしまうと秋にだるさが残るのですね。
軽い運動と十分な睡眠、そして水分とミネラルを意識した食事で、夏の疲れを軽減していくことが大切です。
[秋のだるさの正体]
“秋バテ”は「スイッチ切り替え不良」。自律神経のつまずき
秋になり涼しくなると、身体が重くなったり体調を崩す人が多くなるように感じます。
これは“秋バテ”で夏の疲れが原因なのですか?
一部はそうです。加えて、秋は朝晩が急に冷える、日照時間が減少しメラトニンのリズムが変わる、気圧が乱れる日が多い、湿度が一気に下がるというような変化が起こります。
これらの変化は身体にとっては“ジェットコースター”のようなもので「自律神経の大敵」です。
特に、朝晩の冷え込みが強いと、身体は「体温維持モード」に入りますが、夏に消耗したままの身体では切り替えがうまくいかず、だるさが続いたりすることがあります。

※表は横にスライドしてご覧いただけます。

【秋に現れやすい症状】

症状 原因
朝のだるさ 交感神経と副交感神経の切り替え不良
肌の乾燥 水分代謝の低下、細胞膜の硬化
冷えやすさ 血流が滞り、エネルギー代謝が鈍る
免疫低下 栄養や脂肪酸が不足、細胞膜の柔軟性低下
秋に感じるだるさは、身体が冬に備えて準備をしているサインなのでしょうか。
その通りです。ここで体内スイッチを整えておくことが、冬バテ防止につながります。
[冬バテの最大原因]
“冬バテ”へつながる最大の原因 それは「〇〇〇の硬さ」
“冬バテ”というのは、うまくイメージがわかないのですがどのようなものなのですか?
「夏の放熱モード」➡「秋の体調調整モード」、そして、季節が変わり冬になると身体は寒さから身体を守るために「保温モード」に切り替わります。このモードでは、体温を維持するために脂肪燃焼や筋肉の活動量を増やし、多くのエネルギーを消費します。
この状態が長く続くと、慢性的な疲労や活力の低下、免疫力の低下が起こりやすくなります。
夏や秋と比べて負荷が高いのですね。この負荷とは何の負荷なのでしょうか?
ここでいう負荷とは、身体が寒さに対応するためにかける“エネルギー消費や調整の負担”のことです。
体温を維持するために脂肪を燃やしたり筋肉を動かしたり、血流の流れを調整したり、免疫や神経のはたらきを支えたりするため、身体は見えない部分でフル稼働しています。
そのため、夏や秋に比べて身体にじわじわと負担がかかり、疲労が溜まりやすくなるのです。
身体の中では何が起こっているのでしょうか。
“冬バテ”の大きな原因は、実は「細胞膜の硬さ」にあります。寒さで体温が下がると、細胞膜が硬くなり、栄養や酸素の取り込みがスムーズに行われなくなります。
その結果、身体はエネルギーを作る力が弱まり、全身のはたらきが鈍くなってしまうのです。
細胞の膜が硬くなるだけで、そんなに影響が出るのですか。
大きな影響があります。
細胞膜は身体の「スイッチ」のようなものです。
柔らかければ栄養や情報をスムーズにやり取りでき、身体は元気に動きます。しかし硬くなると、このスイッチがうまく入らず、疲れやすくなったり、手足が冷えたり、肩こりや腰痛、肌や髪の不調、体重増加やむくみなど、さまざまな“冬バテ”症状が現れやすくなります。

■細胞膜が硬くなると何が起こる?

  • 栄養や水分が細胞に入りにくくなる
  • 老廃物が出にくくなる
  • 細胞のはたらき(肌・免疫・筋肉)が鈍る
  • 身体の活動効率が低下しやすくなる
なぜ、寒さで細胞膜が硬くなるのですか。
細胞膜は、リン脂質の“二重の層”でできています。リン脂質には脂肪酸が結合していますが、気温が下がると脂肪酸どうしがぎゅっと近づきやすくなるため、動きにくくなるのです。そうすると細胞膜が硬い膜になってしまいます。
寒さ以外にも細胞膜が硬くなることがあるのですか?
ストレスや活性酸素は、細胞膜を傷つけてしまいリン脂質二重層の並びが乱雑になります。結果として、細胞膜の柔軟性が低下してしまい、物質の出入りや情報伝達がスムーズに行えなくなります。

リン脂質二重層のイメージ画像

リン脂質二重層のイメージ画像

© AKER BIOMARINE, Inc

【細胞の構造図】

不健康な細胞図

© AKER BIOMARINE, Inc

細胞膜は硬くて剛性の高い膜を持ち、栄養を取り込んだり老廃物を排出したりするのが困難になります。

健康な細胞図

© AKER BIOMARINE, Inc

細胞膜は柔らかく、透過性に優れていて、栄養素の吸収や代謝老廃物の排出が円滑に行われます。

[冬でも細胞膜を柔らかく保つ秘密]
脂肪酸の「☆☆」がカギ
それでは、細胞膜を柔らかくするにはどうしたらよいのでしょうか。
まず、細胞膜の柔らかさには、脂肪酸が関係しています。細胞膜はリン脂質でできていて、リン脂質に結合している脂肪酸の種類によって柔軟性が変わります。
脂肪酸にはそれぞれ融点という温度があります。この融点が低いほど、細胞膜は柔らかく保たれます。
「融点」とは具体的にどのようなものですか。
融点とは、固体が液体に変わる温度のことです。脂肪酸の場合、融点が高いものは常温でも固まりやすく、細胞膜を硬くします。一方、融点が低い脂肪酸は常温でも柔らかく、細胞膜を柔軟に保ちます。
寒い季節ほど“低融点の脂肪酸”をしっかり摂ることが、細胞膜を柔らかく保つコツになるのです。

※表は横にスライドしてご覧いただけます。

脂肪酸の種類 主な食品 融点(℃) 特徴
パルミチン酸
(飽和脂肪酸)
バター、ラード 63℃ 高温で固体化、細胞膜を硬くする
ステアリン酸
(飽和脂肪酸)
牛脂、ココアバター 69℃ 硬化しやすい、寒冷に弱い
オレイン酸
(不飽和脂肪酸)
オリーブオイル 16℃ 融点は低め、細胞膜柔軟性維持に有効
EPA(オメガ3) サケ、サバ、ニシン、クリル -54℃ 融点は極めて低く寒冷でも柔軟性維持
DHA(オメガ3) サケ、イワシ、クリル -44℃ 融点は低く細胞膜流動性向上
EPAとDHAはとても融点が低いです。だから寒い環境でもオメガ3脂肪酸が豊富だと細胞膜が柔らかく保てるのですね。
その通りです。寒い海に生息する魚やクリル(南極オキアミ)は、DHAやEPAなど融点の低い脂肪酸を多く含むため、低温でも細胞膜が柔らかく保たれます。その結果、栄養や情報のやり取りがスムーズになり、身体もスムーズに動かせるのです。
それでは、細胞膜を柔らかくするにはどうしたらよいのでしょうか。
ポイントは「脂肪酸の種類」と「生活習慣」にあります。寒い季節には、青魚やクリルオイルなど、オメガ3系脂肪酸を多く含む食材を積極的に摂ることが大切です。また、十分な睡眠や軽い運動で血流を良くすることも、細胞膜を柔らかく保つ秘訣です。
オメガ3は体内で作ることができないため、食事からしっかりと補う栄養戦略が非常に重要です。細胞膜が柔らかくなると、身体は熱を生みやすくなり、疲れにくくなるだけでなく、免疫も安定します。
“冬バテ”は避けられるのですね。
その通りです。
“冬バテ”は「寒さによる身体の負担」が原因ですが、日々の食事や生活習慣で細胞膜を柔らかく保てば、冬を元気に過ごすことができます。
[美容と免疫]
細胞膜が柔らかいと、美容と免疫は整うのか。
細胞膜の柔軟性と美容とは、何か関わりはあるのでしょうか。
細胞膜に柔軟性があると、細胞膜のドアの開閉がスムーズになります。すると、「栄養」、「水分」、「酸素」が細胞に届きやすくなります。
細胞が元気だと、肌のハリや潤いなどにつながるのですね。
逆に細胞膜が硬くなると、肌細胞の内部に「届けたいもの」が届きにくくなります。そうなると「乾燥」、「くすみ」、「ハリの低下」、「ごわつき」が起こりやすくなります。
免疫細胞も「細胞」ですが、細胞膜が柔らかいとどのようになりますか。
外敵の情報を受け取りやすく、必要な成分が届きやすく、動きも素早くなります。
その結果、感染症への抵抗力が高まりやすくなります。

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【細胞膜の柔軟性と身体への影響】

膜の状態 特徴 身体への影響 美容・免疫への影響
柔軟 脂肪酸バランスが良好 栄養の吸収
老廃物排出がスムーズ
肌の潤い・ハリ維持
風邪をひきにくい
やや硬い 脂肪酸バランスが偏る 栄養吸収遅く、疲れやすい 肌の乾燥、免疫力低下
硬化 脂肪酸が不足・酸化 栄養吸収不可、老廃物蓄積 肌荒れ・しわ・たるみ
風邪や感染症にかかりやすい
[冬に疲れが残る理由]
身体の“活動効率”が落ちるとは?
最近特に「ミトコンドリア」に注目が集まっていますが、疲れやすさとの関係があるのでしょうか?
私たちの身体の中には、エネルギー作りを行う“小さな発電所”のような装置があります。それは、細胞の内部に存在する「ミトコンドリア」です。
エネルギーを作る活動効率が低下すると、身体がだるく感じやすくなります。
エネルギーを作る活動効率が低下する原因は何なのでしょうか。
栄養不足、酸化ストレス、運動不足、そして細胞膜の柔軟性の低下などが影響します。細胞膜が硬いと、栄養や酸素がミトコンドリアに届きにくくなるのです。
細胞の構造図

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【ミトコンドリア効率と体調】

状態 特徴 身体への影響
高効率 エネルギー生成がスムーズ 疲れにくい
集中力も高い
低効率 栄養や酸素が届きにくい 疲労感、だるさ
集中力低下
酸化ストレス増加 活性酸素の影響でミトコンドリアが傷む 老化促進、免疫低下
[自律神経と細胞膜]
信号のスムーズな伝達が健康を決める!
自律神経のはたらきと細胞膜とは、どのように関係しているのですか?
大いに関係があります。
交感神経・副交感神経の切り替えには、細胞膜の受容体やイオンチャンネルが関与しています。細胞膜が硬いと信号伝達が遅くなり、自律神経のスイッチが鈍くなるのです。

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【自律神経と細胞膜の状態】

状態 特徴 身体への影響
柔軟な細胞 信号伝達スムーズ 代謝・免疫・水分調整が正常
硬い細胞 受容体の反応鈍化 だるさ、肌の乾燥、免疫低下
[今回のまとめ]
季節のだるさを防ぐ生活習慣!
結局、季節の「だるさリレー」を止めるには何が一番大事ですか。
細胞膜の柔軟性、ミトコンドリアの効率、自律神経のバランス。この3つを整えることが鍵です。
  • 細胞膜を柔らかくする:EPA・DHAを含む青魚やクリルオイルなどを摂る
  • エネルギー効率を高める:ミトコンドリアに栄養を届ける
  • スイッチの切り替えを滑らかにする:十分は睡眠・適度な運動・ストレスケア

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【生活リズムのポイント】

ポイント 方法
朝のスイッチON 朝日を浴びる、軽いストレッチを行う
栄養補給 良質な脂肪酸、ビタミン・ミネラル
眠りの質向上 就寝前のスマホをひかえる、湯船で体温調整
適度な運動 血流促進、ミトコンドリアの活性化
これで元気に過ごせそうですね!
「季節のだるさリレー」は、防ぐことができます。体内スイッチを意識し、細胞膜とミトコンドリア、自律神経を整えて、冬も快適に過ごしましょう。

次回、「矢澤博士に聞いてみよう」をお楽しみにお待ちください。
読者の皆さまからのご質問やご意見などを引き続きお寄せください。