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[Vol.19]ビタミンDの本質と、細胞から考える冬の対策“冬に浮き彫りになる栄養素とは”
節分という季節の分かれ目を過ぎ、暦の上では春に入ったことになります。しかし、まだまだ寒い日が続きます。2月半ばは、寒さの緊張が解けきらず、身体のあちこちに冬の疲れが表面化しやすい時期です。肩や首のこわばり、慢性的なだるさ、気分の落ち込み……こうした冬疲れは、寒さや活動量だけでなく、細胞レベルの栄養状況とも関わっています。
冬になると、ビタミンDが特に注目される栄養素です。その理由は単に「風邪予防に良いから」ではありません。
冬の環境そのものがビタミンDと深く関係しているのです。
ビタミンDが冬に注目される理由は以下の通りです。
- 皮膚に当たるUVB(紫外線B波)の量が少なくなり、日照時間も短くなる
- 感染症が増える
- 気分が落ち込みやすくなる
- 骨トラブルが増える
- 細胞の働きが鈍くなりやすい
つまり冬は「ビタミンDの必要性が可視化される季節」ともいえます。
新シリーズ『矢澤博士に聞いてみよう!!』の第6回です。
読者の皆様よりお寄せいただいたご質問に、矢澤博士が科学的な視点で解説する形式でお届けします。
今号の「読者からのご質問」は
ビタミンDと聞くと骨やカルシウム、風邪予防など身近な働きを思い浮かべるかもしれません。しかしビタミンDはそれだけではありません。全身の細胞、筋肉、肌の健康に関わるマルチタスク栄養素であり、冬の疲れや肌トラブル、免疫の低下などにも深く関係しています。
つまり、ビタミンDは「単に不足すると骨に影響する栄養素」というイメージを超え、冬の体調全体を支える司令塔のような存在と考えることができます。
そこで、まずはビタミンDの正体、そして冬に不足するとどのような影響が出るのかを、順を追って詳しく見ていきましょう。
今回のテーマ
「冬に浮き彫りになる栄養素とは」
今号は、「ビタミンDの本質と、細胞から考える冬の対策」について、矢澤博士に詳しく教えていただきます。
プロフィール
農学博士 矢澤 一良 先生
(Kazunaga Yazawa)
早稲田大学 ナノ・ライフ創新研究機構 規範科学総合研究所ヘルスフード科学部門 部門長
| 1972年 | 京都大学・工学部・工業化学科 卒業 |
| 1973年 | (株)ヤクルト本社・中央研究所入社、微生物生態研究室勤務 |
| 1986年 | (財)相模中央化学研究所入所(主席研究員) |
| 1989年 | 東京大学より農学博士号を授与される |
| 2002年 | 東京水産大学大学院(現東京海洋大学大学院) 水産学研究科 ヘルスフード科学(中島董一郎)寄附講座(客員教授) |
| 2012年 | 東京海洋大学 特定事業「食の安全と機能(ヘルスフード科学)に関する研究」プロジェクト(特任教授) |
| 2014年 | 早稲田大学ナノ理工学研究機構 規範科学総合研究所ヘルスフード科学部門(研究院教授) |
| 2019年より現職 | |
| ライフワークは、「食による予防医学」、「オール世代フレイル対策」など。 | |
冬に浮き彫りになる栄養素とは
ビタミンDの本質と、細胞から考える冬の対策
ビタミンDの正体とは
通常、ビタミンは体内で作れず、食品から摂取する必要があります。しかしビタミンDは、皮膚でUVB(紫外線B波)を浴びることで体内で作られます。そのため、ビタミンでありながらホルモンの性質も持つ特別な栄養素です。
ここでいう「ホルモンのように働く」とは、身体のさまざまな器官や細胞に指令を出し、働きを整える性質があるということです。ホルモンは血液などを通して全身にメッセージを送り、必要なタイミングで身体の機能を調節します。ビタミンDも同じように、活性型(カルシトリオール)となることで、全身の細胞にある受容体に結合し、遺伝子レベルで細胞の働きを整えます。
ビタミンBやCとの違い
ビタミンB群やビタミンCは水溶性ビタミンで、体内に長くためておくことはできません。これらは主に身体の働きを助けたり、疲れやすさを軽くしたり、酸化から守ったりする役割があります。
一方、ビタミンDは脂溶性で身体にためておけるだけでなく、全身の細胞の動きを調整する司令塔のような役割があります。
簡単にまとめると
※表は横にスライドしてご覧いただけます。
| ビタミンB・C | 日々の身体の働きを助けるサポート役 |
|---|---|
| ビタミンD | 全身の細胞に指令を出し、身体の働きを整える司令塔 |
この違いが、冬にビタミンDが特に重要である理由の一つです。
ビタミンDの具体的な働き
※表は横にスライドしてご覧いただけます。
| 骨や歯の健康 | カルシウムの利用をサポート |
|---|---|
| 免疫の働き | 感染や炎症への防御 |
| 筋肉や神経の反応 | 身体を動かす力や神経の働きを整える |
| 肌や血管の健康 | バリア機能や血流を支える |
こうして見ると、ビタミンDは単なる栄養素ではなく、身体全体に指令を出す「司令塔」のような存在です。
- 太陽高度が低い
- UVB量が少ない
- 冬服で皮膚が覆われる
この条件が重なるため、皮膚での生成が減少し、体内のビタミンD量が落ちやすくなります。また、冬は活動量が減り、血流も滞りやすくなるため、細胞レベルでの働きも鈍りやすいのです。
細胞のまわりの脂質(細胞膜)が整っていると、ビタミンDのメッセージがスムーズに届きます。これにより、免疫・筋肉・骨・肌など、体中の細胞が元気に働きやすくなるのです。
冬の疲れや肌の乾燥を防ぐためには、この「細胞膜の環境×脂質×ビタミンD」の関係を意識することがポイントです。
ビタミンDが不足するとどうなるのか
ビタミンDが不足すると、骨に必要なカルシウムを身体がうまく取り込めなくなります。その結果、骨がもろくなりやすく、骨折しやすくなったり、骨の強さが全体的に弱まったりします。特に高齢になると、骨粗しょう症のリスクが高まることも知られています。
※表は横にスライドしてご覧いただけます。
| 免疫機能低下 | 感染症にかかりやすくなる |
|---|---|
| 回復力低下 | 冬の疲労が長引く |
| 筋力低下 | 転倒や運動能力低下 |
| 気分の落ち込み | 冬季うつのリスク増 |
| 肌や粘膜のバリア低下 | 乾燥や荒れ |
ビタミンDはこの調整役として機能します。不足すると回復力や代謝効率が落ち、慢性的な疲労感が現れやすくなるのです。
冬の肌荒れは単なる寒さや乾燥だけでなく、細胞レベルでの栄養不足が関与しています。
ビタミンDのはたらきと重要性とは
- カルシウム吸収の促進(骨の維持)
- 免疫バランスの調整(過剰反応を抑えつつ必要な防御は維持)
- 筋肉の維持(転倒予防や動作安定)
- 細胞分化の調整(健康な細胞への入れ替え)
- 炎症制御(慢性炎症の抑制)
- 皮膚バリア機能のサポート(肌の健康維持)
例えば
- 抗菌ペプチドの生成 → 感染防御
- 炎症性サイトカインの抑制 → 慢性炎症予防
- 骨・筋肉・皮膚細胞の分化方向調整
冬の低活動や寒冷ストレスでも、細胞環境を整え回復力を支えることが可能です。
冬の生活習慣とビタミンD
冬は日照時間が短く、室内で過ごす時間が増えます。運動量が減り、血流も滞りやすくなるため、細胞にビタミンDが届きにくくなります。また、食事量が減ったり、睡眠リズムが崩れることもあります。
ビタミンDの働きを支える生活習慣のポイントは以下です。
※表は横にスライドしてご覧いただけます。
| 食事 | 魚、きのこ、卵、乳製品などで補う |
|---|---|
| 運動 | 軽い筋トレやストレッチで血流促進 |
| 睡眠 | ホルモンバランスを整え、免疫機能をサポート |
・しいたけやまいたけの天日干し
・卵料理(ゆで卵、スクランブルエッグなど)
・小魚やチーズなどの乳製品
これらを週に数回、バランスよく取り入れると、日光だけでは補いきれないビタミンDを食品から補給できます。
- スクワットや腕立て伏せなど自重トレーニング
- ヨガやストレッチで血流を促進
- ウォーキングや階段利用で軽く身体を動かす
血流が良くなることで、ビタミンDが細胞に届きやすくなります。
睡眠不足だと、せっかく摂ったビタミンDが最大限に活用されにくくなることがあります。
規則正しい睡眠が、ビタミンDの力を引き出す鍵となります。
光老化と安全な日光浴
ビタミンDをつくるために必要な日光の量は、季節や地域によって異なります。
- 春〜秋:比較的短時間(10〜15分程度)が目安
- 冬:日差しが弱いため、やや長め(20〜30分程度)が必要になることも
- 緯度の高い地域の冬:日光だけでは十分に作れない場合もあります
そのため、「毎日何分」と一律に決めるのではなく、季節に応じて調整することが大切です。
国立環境研究所が、紫外線の強さやビタミンD生成量をリアルタイムで確認できる情報を公開していることが紹介されています。
ビタミンD生成・紅斑紫外線量情報|地球環境研究センター
光老化が心配な場合は、次の工夫がおすすめです。
- 顔は日焼け止めでしっかり守る
- 腕や手の甲など一部のみを露出する
- 真夏の強い直射日光は避ける
- 長時間浴び続けない
ビタミンDは、長時間の日焼けをしなくても作られます。
「焼く」のではなく、「少し光を取り入れる」という感覚で十分です。
そしてもう一つ大切なのは、
日光だけに頼るのではなく、食品やサプリメントも組み合わせることです。
そうすることで、肌への負担を抑えながら、安定してビタミンDを補うことができます。
冬は特に日差しが弱くなります。
光老化を防ぎながら、必要な栄養を上手に取り入れるというバランス感覚こそが、現代的なビタミンD対策といえるでしょう。
◎体内時計を整える(可視光の作用)
太陽の光(特に朝の光)を目から感じることで、脳の視交叉上核が刺激され、体内時計がリセットされます。
その結果:
- 夜に自然な眠気が来やすくなる
- 睡眠の質が安定する
- ホルモン分泌のリズムが整う
- 日中の集中力が上がる
これは紫外線ではなく、可視光(明るさ)による効果です。
冬に気分が落ち込みやすいのは、日照不足によるリズムの乱れも関係します。
◎セロトニンの分泌促進(気分の安定)
日光を浴びると、脳内で、セロトニン(幸福ホルモン)の分泌が促されます。
セロトニンは:
- 気分の安定
- 不安の軽減
- やる気の維持
に関わります。
冬季うつ(季節性感情障害)が起こるのは、日照時間の減少が関係しています。
◎血管の拡張(UVAの作用)
近年の研究では、UVAが皮膚内の一酸化窒素(NO)を放出させ、血管を広げる作用があることが報告されています。
その結果:
- 血圧の安定
- 血流改善
につながる可能性が示唆されています。
※ただしUVAは光老化の主因でもあるため、長時間曝露は推奨されません。
◎免疫のバランス調整(ビタミンD以外の経路も)
日光はビタミンDを介する経路以外にも、皮膚や神経を通じて免疫機能に影響を与える可能性が研究されています。
つまり、日光は単なる「ビタミンD製造装置」ではなく、体全体のリズムや神経系にも働きかける自然刺激と考えられています。
◎皮膚のバリア機能への刺激
適度な日光刺激は、皮膚の防御機能を活性化する面もあります。
ただしこれは「適度」であることが前提です。
過剰な紫外線は逆に:
- シミ
- たるみ
- コラーゲン減少
を招きます。
ビタミンD×リン脂質型オメガ3の相乗効果
ビタミンDは、水よりも油に溶けやすい特徴があります。そのため、脂質と一緒に摂ることで体内に取り込まれやすくなります。
さらに、ビタミンDは身体の中で働くとき、細胞の表面にある「受け取る場所(受容体)」に情報を届ける必要があります。その通り道になるのが、細胞膜です。
細胞膜は脂質でできており、この膜がしなやかで整っていると、ビタミンDの情報がスムーズに伝わります。
逆に、膜が硬くなっていると、情報の伝わり方が弱くなることがあります。
そこで大切なのが、質のよい脂質です。特に、膜のしなやかさを支えるリン脂質型オメガ3は、細胞膜の環境を整える役割を担います。つまり、ビタミンDは単独で働くのではなく、脂質という“土台”があってこそ、その力を発揮しやすくなる栄養素なのです。
ビタミンDは、身体の中でさまざまな細胞に「こう働いてください」という合図を送ります。骨、筋肉、免疫、肌など、全身がその指示を受け取っています。しかし、どんなに良い指示を出しても、それを受け取る側の環境が整っていなければ、十分に活かされません。そこで重要になるのが細胞膜の状態です。
細胞膜は細胞を包む薄い膜で、主に脂質からできています。
この膜がしなやかで整っていると、
- ビタミンDの合図を受け取りやすくなる
- 細胞同士の情報交換がスムーズになる
- 炎症の偏りが起こりにくくなる
といった良い循環が生まれます。
特にリン脂質型オメガ3は、細胞膜の材料となり、膜をやわらかく保つサポートをします。
① 免疫の安定
ビタミンDは免疫の働きを整える栄養素として知られています。
そこにオメガ3が加わることで、過剰な炎症を抑える方向に働きやすくなります。
結果として、
- 季節の変わり目の体調管理
- 花粉やウイルスに負けにくい身体づくり
のサポートが期待できます。
② 筋肉のコンディション維持
ビタミンDは筋肉の反応性にも関わります。
細胞膜がしなやかであると、筋肉の細胞も指令を受け取りやすくなります。
- 冬のこわばり感
- 年齢による筋力低下
の対策としても、組み合わせは理にかなっています。
③ 肌の健やかさ
ビタミンDは皮膚のバリア機能にも関与します。
一方でオメガ3は炎症のバランスを整え、乾燥やゆらぎを防ぐサポートをします。
そのため、
- 乾燥しやすい冬の肌
- 赤みやゆらぎ
に対して、内側から整えるアプローチになります。
ビタミンDが「優秀な指揮者」だとすれば、リン脂質型オメガ3は「音がきれいに響くホール」のような存在です。どちらか一方だけでは不十分で、両方がそろうことで全体のハーモニーが整います。
まとめ
冬は光が減り、活動量が落ち、血流が滞り、回復力が試される季節です。
ビタミンDは、骨や免疫だけでなく、細胞全体の調整役として冬の健康を支えます。
その働きを最大限に引き出すには、細胞膜の質=脂質環境を整えることが重要です。
食事、運動、睡眠を整え、脂質の質も意識することで、冬の疲れや肌トラブルを軽減できます。
現代の栄養学は、単体栄養素から、組み合わせによる統合的アプローチの時代へ進化しています。ビタミンDと脂質の相乗効果はまさにその代表例です。
やがて日差しは強まり、景色はゆっくりと春へ向かいます。その変化を軽やかに迎えるために、今は土台を整える時間です。
光を上手に取り入れ、栄養を賢く組み合わせ、細胞の環境まで意識する。
目に見えない小さな選択の積み重ねが、春の健やかさや透明感につながっていきます。
季節が動き出す前に、身体の内側も一歩先へ。
次の季節を、いちばん良いコンディションで迎えましょう。
次回も引き続き読者のみなさまに寄り添った内容で、「矢澤博士に聞いてみよう」をお送りいたします。
読者の皆さまからのご質問やご意見などを引き続きお寄せください。
ご質問は、contents@krilloil.or.jpまでお送りください。
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